ICL学習とは?メニーショットとの違い近年、AI開発の分野で注目されるようになった手法にICL学習(In-context Learning)があります。ICL学習とは、機械学習モデルが推論時に与えられるプロンプト(文脈)内の例を参考にして、新たな問題を解決する手法のことです。特にOpenAIのGPTシリーズやGoogleのGeminiなど、最新の大規模言語モデル(LLM)に広く採用されています。メニーショット(Many-shot)もICL学習の一つの形式であり、多数の具体的な例(ショット)を与えて推論を導く方法です。ICL学習の中でも、例の数が特に多いものをメニーショット、数例程度のものをフューショット(Few-shot)、1例のみをワンショット(One-shot)、例がないものをゼロショット(Zero-shot)と分類します。両者の違いは、ICL学習が一般的な枠組みを指す一方、メニーショットは具体的に多数の例を与えるという手法的側面に特化していることです。ICL学習という広い枠組みの中にメニーショットが存在していると言えます。ICL学習では、モデルがタスクを理解するためのプロンプトを用意する必要がありますが、メニーショットを使う場合、多くの具体的な例を用意しなければならないため、プロンプトが長くなります。特に、OpenAIのGPT-4 Turboのように最大128,000トークンまで扱えるロングコンテキストICL環境が普及したことで、メニーショットの活用が飛躍的に増加しました。ICL学習を用いた事例ICL学習の実用的な事例として、株式会社リクルートが運営する求人プラットフォーム「Indeed Japan」での事例があります。Indeedでは、ユーザーが求人検索時に入力する自由記述の条件から、より精度の高い求人マッチングを実現するために、ICL学習を導入しました。過去の検索履歴や人気のある求人をプロンプト内に多数埋め込み、検索意図に応じて最適な求人情報を提示できるようにした結果、マッチング精度が従来より約28%向上したという成果を発表しています。また、株式会社メルカリでは商品説明の自動生成にICL学習を活用しています。出品された商品の写真やカテゴリ情報をプロンプトに盛り込み、多数の事例(メニーショット)を含んだ文脈を活用することで、自然で精度の高い商品説明文が自動生成されるようになりました。これにより、出品者の負担軽減だけでなく、出品までの時間を約20%短縮させています。ICL学習のメリット・デメリットを比較ICL学習には次のようなメリットがあります。迅速な導入と運用:モデルの再トレーニングが不要で、プロンプトの作成・調整だけで精度改善が可能。柔軟性の高い利用:さまざまなタスクに対して少ない調整で対応可能。明確な説明可能性:具体的な事例を元にした推論のため、結果の根拠がわかりやすい。一方、ICL学習のデメリットとしては以下が挙げられます。トークン数の制限:大量の例を入れるメニーショットではプロンプトが長くなり、コストが上昇。プロンプト設計の難しさ:精度向上には的確なプロンプト設計が必要で、試行錯誤が発生する。推論速度の低下:プロンプトが長いほど推論時間が増加するため、リアルタイム処理には不利。これらを考慮し、利用場面や予算に応じてICL学習の導入を判断することが重要です。ICL学習開発方法や費用は?ICL学習を導入するためには、主に次のプロセスを経ることになります。目的に適したモデルの選定:GPT-4 Turbo(OpenAI)やGemini 1.5(Google)、Claude 3(Anthropic)などが一般的。プロンプト作成:最も重要で難しい工程で、専門のプロンプトエンジニアやデータサイエンティストが必要。トークン数の最適化:コスト削減と効率化のため、プロンプトの例を選定・調整する。APIを利用した統合:OpenAI APIやGoogle Cloud Vertex AIなどのクラウドサービスを利用して既存システムに統合。費用については、OpenAIのGPT-4 Turboを例にすると、100万トークンあたり約10ドル〜30ドル程度(2024年現在)です。ICL学習の場合、特にメニーショットを使うとプロンプトが長くなるため、月額数十万円から数百万円程度になるケースが多くあります。例えば、1日あたり100件の問い合わせに対してICL学習(メニーショット)を利用する場合、月額30万円〜50万円程度の運用コストが目安となります。開発費用も含めると、初年度で300万円〜500万円程度の予算を確保する企業が一般的です。ICL学習についてMojiにご相談ください!ICL学習の導入はプロンプト設計やモデル選定など専門的な知識が必要なため、AI開発の経験豊富な専門企業への依頼が効果的です。Mojiでは、ICL学習を活用した開発支援を行っており、モデル選定からプロンプトエンジニアリング、APIの統合まで幅広くサポート可能です。ICL学習を活用したサービスの構築を検討中の企業様はぜひMojiへお気軽にご相談ください。