LAMとは?RAGとの違いは?近年、大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)をはじめとする生成系AIが急速に進化する中、「テキストの生成」だけにとどまらず、実世界における行動や操作にまで踏み込んだ新しいモデルアーキテクチャが注目を浴びています。その一つが*LAM(Large Action Model)*です。LAMは、従来のLLMの能力を拡張し、実行や操作といった「アクション」に焦点を当てたAIモデルとして位置づけられています。たとえば、文章による指示に対して単に回答テキストを生成するだけでなく、実際にロボットアームやWebアプリケーションを操作し、作業フローを自動化することを目指すのがLAMの特徴です。類似の概念に*RAG(Retrieval-Augmented Generation)*がありますが、こちらはLLMに「外部データを検索・取り込み」する仕組みを追加し、幅広い情報源を活用しながら生成を行うという手法です。RAGでは、ドキュメントやデータベースから検索した文章を用いて回答やコンテンツを作成します。一方でLAM(Large Action Model)は、情報検索だけでなく「アクション(操作・実行)を組み込む」ことが主眼となっており、物理世界やソフトウェア世界に対する実行コマンドの生成・制御まで踏み込む点が大きな違いです。大手テック企業のGoogle ResearchやMicrosoft Research、さらにはOpenAIの研究コミュニティでは、2024年後半から2025年にかけて、LLMをベースにしたロボティクスや自動化の研究が数多く進められています。たとえば「SayCan」というプロジェクトでは、人間の指示をLLMが解釈し、それをロボットが実際に行動へと落とし込む部分に「行動モデル」を組み込む試みがありました。これをさらに発展させた形で「Large Action Model(LAM)」という概念が広まりつつあります。多段階の行動シナリオや不確実性の高い環境において、人間のように柔軟なタスク実行を実現するため、今後は産業ロボットや自動運転、物流、さらにはバーチャル空間でのエージェント制御など、幅広い領域での応用が期待されます。LAMを用いた事例倉庫作業の自動化(Amazon, 2025年試験導入)世界最大級のEC企業であるAmazonでは、広大な物流倉庫で商品をピッキングして梱包・出荷する一連の作業を可能な限り自動化しようとしています。従来は人間の作業員とロボットを組み合わせるハイブリッド運用がメインでしたが、LAMを活用した新世代ロボティクスシステムのPoCが始まりました。具体的には「音声やテキストで指定した商品の保管エリア」「商品の形状」などをLLMが理解し、それを踏まえたうえで「ロボットアームの動き方」や「走行ルートの決定」といったアクションを自動生成する仕組みが試されているのです。2025年初頭のテスト結果では、従来の半自動化システムと比べ、1日あたりの処理件数を15〜20%向上できる見込みがあると報告されています。サービス業向けAI受付システム(ホテルチェーンでの導入事例)大手ホテルチェーン「ホテルオークラ」系列の一部施設では、対話型AIをフロント受付に導入して、宿泊客のチェックインや観光案内などをサポートする試験運用を行っています。ここで採用されているのがLAMのコンセプトを取り入れた仕組みです。具体的には、お客様の要望(例:「近くのレストランを予約したい」「荷物を部屋まで運んでほしい」など)をLLMが言語的に解析し、その上で「予約フォームへ入力する」「配達ロボットをエレベーターまで移動させる」などの実行ステップをLamモジュールが司ります。まだPoC段階ながら、深夜帯のスタッフ配置削減や多言語対応の効率化が期待されており、運用テストでは月間人件費を約10%削減しながら顧客満足度の維持に成功しているとのことです。自動運転向けシステム(トヨタ自動車の研究)自動車業界でも、走行中の車両が周囲の状況を「読む」だけでなく、「どのタイミングで加速・減速し、方向転換するか」というアクションを判断する部分にまでLLMを応用しようという動きが出てきています。トヨタ自動車が2025年前後に公表した研究資料では、「Large Action Modelの設計思想を取り入れ、センサーデータの解析結果から連続的な運転操作を導き出す」取り組みが紹介されていました。従来の自動運転アルゴリズムは、ルールベースや強化学習をメインに構築されていましたが、複雑な環境での直感的な判断に限界がありました。LAMを組み込むことで、より柔軟なタスク制御が期待でき、例えば「工事中の車線変更での合流」や「予測不能な歩行者の動き」などにも対処可能になるのではないか、と研究者たちは述べています。産業用ロボットの多段階タスク(FanucやABBでの実証実験)工場の自動化を支えるロボットメーカーとして有名なFanucやABBなどでは、単純なピック&プレースではなく「多段階の組み立て」「検査手順を含むライン作業」といった高難度タスクにロボットを適用しようとする動きがあります。LAMの概念は、こうした多段階の行動決定を一括して管理する上で有効とされています。ABBのラボによれば、LAMを活用することで、どのパーツをどの順番でどのように扱うかといった「タスク計画の自動生成」と「実際の動作制御」のギャップを埋めやすくなるとのこと。2024年に実施されたPoCでは、人間作業員を補助する半自動ラインにおいて、組み立てミスを従来の約1/2に減らし、かつ1日の作業スループットを10%向上できたと報告されています。LAMのメリット・デメリットを比較LAM(Large Action Model)の導入には、多くのメリットがある一方で、留意すべき課題も存在します。LLMやRAGとの比較を踏まえながら、以下のポイントを把握しておきましょう。【メリット】行動決定と言語理解の統合従来のLLMは会話や文章生成には強い一方で、物理的・ソフトウェア的な操作や行動制御は別のアルゴリズムが担うことが多く、2つのシステムを連携させるコストがかかっていました。LAMではこれを統合的に扱うため、たとえばチャットボットが自動的に社内システムを操作して書類を作成する、ロボットが環境情報を読み取って複雑なタスクを実行するといったシームレスな運用が可能になります。柔軟な意思決定ルールベースや特化型AIでは対応しきれないイレギュラーな状況に対しても、LLM由来の推論力を活かして柔軟に対応できるのが強みです。たとえば棚卸しロボットが想定外の障害物を発見した場合に、回避経路をLLMが作り、行動の最適化をLAMが実行フェーズで統括する、といった高度な協働が期待できます。高度なタスク分割と並列実行LAMは複雑なタスクを「サブタスク」に分割しながら行動を進める仕組みを内部に持たせることができます。複数のアクションを並列的・段階的に制御するため、大量の作業を効率よく処理できる点は、物流や製造業など多くのシーンで有用です。【デメリット】環境依存性が高いLAMは言語処理と行動制御の融合が前提であるため、実際に導入する際にはターゲットとなる環境(倉庫、工場、オフィスなど)の物理的・ソフトウェア的な制約を深く理解し、モデルをカスタマイズする必要があります。環境が変わるたびに大幅な再学習や調整が必要になるリスクがあります。安全性・信頼性の問題言語モデルが間違った推論を行っても、通常のチャットなら単に誤情報を出す程度で済むかもしれません。しかしLAMの場合、誤推論が直接「誤ったアクション」につながる危険性があります。産業ロボットが予期せぬ挙動をすれば、作業員の安全を脅かす重大な事故に発展するリスクがあるため、厳格な検証とフェイルセーフ設計が不可欠です。大規模な開発リソースと運用コストLAMを構築・運用するには、LLMに加えてロボット制御やシステム連携のノウハウが必要となります。センサーやカメラ、ネットワーク、クラウド基盤など、多方面のエンジニアリングリソースを確保しなければならず、初期投資と継続的な運用費用が膨らみやすい点は大きな課題と言えるでしょう。LAM開発方法や費用は?LAM(Large Action Model)を導入するにあたって、大まかには以下の2つのアプローチが考えられます。クラウドプラットフォーム活用型AWSやAzure、Google Cloudなど、すでにLLMやロボット制御用のサービスを提供しているプラットフォームを組み合わせ、そこにLAMの仕組みを乗せる方式です。PoCのハードルが低い: スモールスタートでPoCを行い、クラウドの従量課金を活用することで、月額10万円~50万円程度の予算から試験運用できる場合もあります。スケールアップが容易: PoCが成功したら大規模システムへ拡張しやすいメリットがありますが、使用量に応じてクラウドコストが急増するリスクがあります。大規模運用では月額100万円~数百万円になることも想定されます。オンプレミス・独自構築型企業内のデータセンターや工場など、物理的に閉じた環境でLAMを運用するアプローチです。物流や製造業など、ネットワーク遅延を嫌うリアルタイム制御や高いセキュリティを求める場面で選択されがちです。初期費用が高額: GPUクラスタやロボット群、センサー類、ネットワーク機器などを準備する必要があり、導入時に数百万円~数千万円単位の投資が必要になります。長期的コストの安定化: 一度構築してしまえば、クラウドの従量課金リスクを抑えられる場合があります。ただし、システム更新やモデルバージョンアップのたびに専門人材を確保し、継続的にメンテナンスするコストがかかります。導入スケジュールとおおまかな費用感LAMの導入プロジェクトは、要件定義からPoC、本格導入まで見通すと、短くても6カ月程度、要件が複雑な場合は1~2年にわたることも珍しくありません。PoCフェーズ: 3~6カ月で基礎的なタスクをLAMに実行させ、技術的課題とROI(費用対効果)を評価。小規模な実証では100万~300万円の範囲で済むこともあります。本格導入フェーズ: 工場ラインや大規模倉庫への適用を想定すると、初期導入費用が1,000万円を超えるケースも多いです。加えて、月額運用費用(サーバー維持、ロボット保守、クラウド契約)が100万円~数百万円かかることもあります。拡張・バージョン管理: 一度導入して終わりではなく、ロボット制御部分やLLMのバージョンアップ、新しいサブタスク追加などが発生し、そのたびにエンジニアリングコストが必要です。事前準備のポイントLAMの導入で成功を収める企業は、事前に「本当に自動化・行動モデル化すべきタスクが何か」「どれだけのROIを期待できるか」を明確に定義しています。曖昧な状態で大規模な投資をしてしまうと、PoC段階で想定外のトラブルや予算超過に直面しやすいでしょう。また、安全性や信頼性に直結するフェイルセーフ設計、セキュリティ・プライバシー対策、データガバナンスなどの体制整備も重要です。LAM導入は単なるAI導入ではなく、業務プロセスとシステム全体を見直す大きなプロジェクトとして捉える必要があります。LAMについてMojiにご相談ください!LAM(Large Action Model)は、LLMと物理的・ソフトウェア的なアクションを統合する次世代のAIモデルとして、産業界やサービス業の自動化を大きく前進させる可能性があります。しかし、その導入には高度な技術力と周到なプロジェクトマネジメントが欠かせません。単にモデルを導入するだけでなく、ロボットやシステムとの連携設計、安全性の検証、運用時のトラブルシューティングなど、多角的な視点でアプローチする必要があります。株式会社Mojiでは、LAMを含む最先端のAI技術に関する研究開発やシステムインテグレーションに豊富な経験を有しています。大手製造業向けのロボティクス制御やチャットボット自動化など、多様な実績をもとに以下のようなサービスを提供いたします。PoC(概念実証)支援小規模プロジェクトからスタートし、LAMの有用性やROIを確かめる段階で、最適なアプローチをご提案。PoC成功後もスムーズに本番導入へ移行できるよう、システム設計・予算管理をサポートします。クラウド/オンプレミス両対応のアーキテクチャ設計Microsoft AzureやAWS、Google Cloud Platform上での構築から、自社サーバー運用に至るまで、貴社の要件に合った最適なアーキテクチャを設計。必要に応じてハイブリッド構成もご提案可能です。LAM/LLMの高度カスタマイズ大規模言語モデル(LLM)にLAMを組み合わせる場合、タスク分割や安全策などの専門知識が求められます。Mojiのエンジニアは、PythonやC++、ROS(Robot Operating System)など、多言語・多領域の技術を駆使しながらカスタムソリューションを構築します。運用保守・バージョン管理一度稼働し始めたシステムも、環境変化やモデルアップデートへの対応が常に必要です。Mojiは、定期的なメンテナンスやモデル再学習、ロボット保守など、長期にわたる運用サポート体制を整え、貴社の安定運用を支援します。例えば、ある大手物流企業の倉庫自動化プロジェクトでは、LAMを活用してピッキングから梱包・在庫管理までの一連のタスクを統合管理し、週あたりの人件費を15%以上削減することに成功しました。また、サービス業の例では、ホテル内配送ロボットとチャットボットを連携させることで、スタッフが直接対応しなくても部屋への物品配達を自動化し、顧客満足度と運用効率を両立する事例が報告されています。「ロボット導入は考えているが、どこから手をつけていいかわからない」「LLMの実力を活かしつつ、実際の操作や作業へ展開したい」といったお悩みをお持ちの企業様は、ぜひMojiにご相談ください。要件定義やPoC設計から開発・保守まで、一貫してサポートし、貴社がLAMを最大限に活用できる環境を共に築きあげます。お問い合わせは弊社Webサイトまたはお電話にてお気軽にどうぞ。LAMの時代をリードする先進的なソリューションで、貴社のビジネス革新を力強く後押ししてまいります。